ＯＰＤＥＳのフリースタイル初代委員長として、その創設からご尽力いただいた、故島田耕作氏を偲び、筆をとります。
　氏との出会いから何年なるのだろう。訓練士の村瀬さんの紹介で、直方の当時の氏のご自宅で出会ってからだから、三十数年の月日が流れたことになる。
初対面から、訓練について熱く語る氏の言葉は、当時の私に、新鮮で強烈なインパクトを与えたことを、その話の内容と共に、今でも鮮明に記憶している。
　それからは、遠賀川河川敷の防衛合同練習で毎週お会いすることになり、語り合う機会も多くなったが、氏の訓練に対する斬新な発想と、それを裏付ける深い理論は、忽ち私を氏の虜にした。そして、その理論を見事に具現化する技術には圧倒されることばかりだった。
　私は、四十年を超える訓練士人生の中で、国内外の多くの優秀なトレーナーに出会い、何十人もの世界チャンピオンとも交流を持ち、その高度な技術に触れてきたが、コンプレックスを持ったのは、「島田耕作」ただ一人だった。勝てる気がしなかった。競技会の成績に於いて勝ることが有っても、それは、年齢差からくる練習量の差だけだった。
　氏が、晩年フリースタイルに出会い、その高度なオビディエンスの技術を国内外に知らしめる機会を得たことは、私にとって望外の喜びであった。しかしながら、もう少し早く、氏の体力があるときに、フリースタイルが日本に根付いていたら、氏の理論と技術に触れることができる人がもっと多くいたであろうと思うと、それは残念でならない。
ここ十年程は、フリースタイルの島田さん、という紹介をされることが多かったが、氏は、臭気選別・足跡追及、防衛、服従、アジリティ、その他さまざまな訓練のエキスパートであり、世界のトップトレーナーの一人であった。
　不世出の天才“島田耕作”氏のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、氏の、ＯＰＤＥＳに対するご尽力と多大な貢献に心より感謝申し上げます。
　
ＯＰＤＥＳ福岡支部　田辺 久人